世の中には、「お金のノウハウ」があふれています。たとえば、
- 支出を管理して、先取り貯蓄しよう
- つみたてNISAなどでコツコツ資産運用しよう
などなど。でも、こういうノウハウをいくら知っていても、実際の行動に移せるかは別問題です。だって、
- SNSで見たこのコスメ、すごく可愛いし、たまには買ってもいいよね!(冷静に考えると「たまに」ではない)
- 今月は外食が多くて投資に回すお金が減っちゃったけど、まあいいか(そして増えない資産)
などなど、現実の世界には誘惑がいっぱい!いくら本やネットで知識を仕入れても、継続して実践するのは本当に難しいと感じます。
言い換えると、お金持ちと凡人の違いは、「お金のノウハウ」を知っているか否かでなく、それを行動に移せるか否かにあるということ!
じゃあ、どうしてお金持ちは「お金のノウハウ」をコツコツ実行できるのか?
その謎をひも解くために、お金持ちのマインドセット=思考パターンを調べた書籍が、モーガン・ハウセル著「サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット」です。
お金持ちの「考え方のクセ」を研究
「サイコロジー・オブ・マネー」は、直訳すると「お金の心理学」。ざっくりいうと、お金持ちの「思考パターン」や「考え方のクセ」を研究することで、お金持ちになるヒントを得よう!という内容です。
著者のモーガン・ハウセル氏はベンチャーキャピタルでパートナーをつとめる、正真正銘の「お金のプロ」。サイコロジー・オブ・マネーは2020年9月に英語で発売された本ですが、
- 発売2カ月で7万部突破
- 全世界累計100万部、43か国で刊行
- 「ここ数年で最高かつ、最も独創的なお金の本」byウォール・ストリート・ジャーナル
など、とにかく売れまくっているようす。わたしも書店で平積みになっているのを見て、思わず手に取ってしまいました。
20個の「富のマインドセット」を章ごとに解説していく構成で、スキマ時間でも読みやすいのが特徴。お金を節約する方法だけでなく、上手に使う方法まで幅広く解説する一冊です。
具体的なアドバイスが多いので、内容すべてを1つのブログ記事にまとめることはできないけれど、なかでも心に響いた「富のマインドセット」4つについて、ピックアップ&メモしておきたいと思います。
「富」と「物質的豊かさ」の違い
英語には、似て非なる概念の「ウェルス(富)」と「リッチネス(物質的豊かさ)」があります。
- ウェルス(富):資産、財産。保有している、まだ使われていないお金のこと
- リッチネス(物質的豊かさ):沢山のお金を使って贅沢な買い物をしていること
わたしたちが「お金持ち」というとき、一般的にイメージするのは資産がたっぷりあって、買い物も沢山している姿(=ウェルスがあって、かつリッチネスな状態)。
でも、実はウェルスとリッチネスは相反する概念。なぜなら、リッチネスにお買い物を楽しむと、どんどんお金がなくなっていき、ウェルス(富)が目減りしていくから!
お金持ちに憧れて、いくらリッチネスな人の真似をしても、真の富=ウェルスを手に入れることはできません。
つい「お金持ち=お金を沢山使っている人」と考えてしまいがちだけれど、「お金持ち=お金を(使わずに)沢山持っている人」という、当たり前のことを忘れないようにしないとな~と感じます。
収入-エゴ=貯蓄
一定の生活レベルが満たされたとき、それ以上に何かが欲しくなるのは見栄や他人との比較が原因である。
(中略)
富を築く人には、他人の目を過度に気にしないという傾向がある。
モーガン・ハウセル「サイコロジー・オブ・マネー」
もう、これに関しては「ごもっともです」のひと言に尽きます。
SNSなんかを見て、自分と他人を比べては「あれもない、これも持ってない」と考えることほど不毛なことはないって、わかっているのに、わかっているのに……!!
「他人と比較するのはやめよう」という教訓は、もちろんお金の分野でも生きてくるということですね。
贅沢や浪費を全て我慢する必要はないけれど、たとえばブランドバッグを買う前に、「同じデザインでノーブランドのアイテムだったとしても、同じ値段で買うか?」と自問自答するのも大切かなと思います。
それにしても「収入-エゴ=貯蓄」って、浪費大好きなわたしには耳の痛すぎる一文……。もしタトゥーを彫る機会があったら、この一文を有力候補にしたいと思います。
「収入」より「貯蓄率」が大切
サイコロジー・オブ・マネーの冒頭では、「ロナウド・ジェームズ・リード」という人物が紹介されています。
ロナウド・ジェームズ・リードは、アメリカの投資家、清掃員、ガソリンスタンド店員である。
リードはガソリンスタンドに25年間務め、その後は清掃員として17年間パートタイムで働いた。友人たちは、彼の一番の趣味は薪割りだったと回想している。
リードは92歳で亡くなったが、彼の死は国際的なニュースになった。なぜなら、リードは800万ドル(=約9億円!)以上もの資産を遺したのだ。
なぜ、田舎の地味な清掃員であった彼がこんな大金を手にしたのか?ひとえに彼が若いころから節約し、貯金して、それをコツコツ投資してきたからに他ならない。
資産形成のお手本みたいな話で、にわかに信じがたいですよね……9億円だなんてすごすぎる!!
彼の話から学べることは、「支出=貯蓄率をコントロールし、コツコツ資産形成を続けるのが大切。大きな収入がなくても、大きな資産を作ることはできる」ということ。
いきなり高収入になるのは無理だけれど、毎月の支出は今すぐ自分で管理できます。高収入ではないことは、お金を貯められない言い訳にできない、ともいえそうです。
お金がもたらす最大の価値は「自由」
「お金持ちな人はきっと、欲しいものを買えて、豪華な家に住めて、さぞ幸せだろうなあ……」というイメージを持っている人は多いはず。
でも実は、収入額はそこまで幸福度に関係しないことが調査により判明しています。では何が幸福度を左右するかというと、「人生を自分でコントロールしている感覚」が大切!
どんなに高い給料よりも(中略)「好きなときに、好きな人と、好きなことができる」生活を送れることのほうが、人を幸せにする
(中略)
自分の時間をコントロールできないことほど、幸せを強力に妨げることはない。
モーガン・ハウセル「サイコロジー・オブ・マネー」
これ、日曜の夜が憂鬱になりがちなサラリーマンとしては、身に沁みすぎる名言です……。
だって、「好きなときに、好きな人と、好きなことができる生活」って、何それ天国ですか??
自分の時間を自分で完全にコントロールできるだなんて、夢のような贅沢なのですが???
「お金持ち=買い物し放題!贅沢ざんまい!」なイメージだったけれど、そんなイメージを追いかけても、きっと幸せにはなれないんだろうなあと実感。
お金って、ものを買い集めるためじゃなくて、自由を得るために使うものなんだなあとハッとさせられました。
資産形成のモチベーションを高めてくれる
「サイコロジー・オブ・マネー」では、今回紹介した内容以外にも、著者が実践している投資方法などが具体的に紹介されています。
全くの投資初心者にはちょっと難しいかもしれないけれど、多少の知識があれば十分楽しめるレベル感で、とても勉強になりました!
この手の本はけっこう読んできたつもりだけれど、小手先のテクニックではなく、「お金に対する考え方」そのものにフォーカスした内容で、読み物としても面白かったです。貯金や資産形成を頑張るモチベーションも高めてくれる1冊。
自分のダメさ加減を突き付けられて、いい意味でちょっと落ち込んだり、耳が痛くなる箇所も多かったけれど、それも含めて良い本でした!